この決断:乳癌(中)検査結果が、「灰色」なのに切除
外来での「生検」も無しに、いきなりの乳癌の手術
「後で「癌」ではなかった」といわれても、むなしく聞こえるだけ
朝日新聞(97-12-10)から引用



★手術で意識がない間に、自分の体について医師たちが話し合い、重大な決断をしていたらー。東北地方に暮らす鈴木愛さん(50)=仮名=は、2年前、手術で乳房の4分の1を取られた後、「乳がんではなかった」と主治医にいわれた。今なお、やり切れない思いと手術の後遺症に耐えている。

@大学病院で、術前の病理組織検査を行わないまま乳癌手術をし
A医師は「苦渋の選択をした」というが、「2つの疑問」が残る
B患者は、「医師に全てをゆだねる」ことを理解してほしい


@ 術前の病理組織検査を行わないまま乳癌手術をした


手術を考慮し、転院して大学病院へ行ったが
[第1診]健康診断で、しこりが見つかった。
[第2診]近くの病院で検査を受けた結果、たぶん悪性なので病理組織診断をしてから手術しようと言われた。(編者注:この段階の病理組織診断は「細胞診」で、その結果は、癌を疑うクラス「5」。手術は大きい病院でした方がよいと考え、[第3診]の大学病院へ行ったものと思われます)
[第3診]他県の大学病院に移った。ここで、再び、触診、エコー、マンモグラフィー(乳房専門の]線撮影装置による検査)。乳がんとの診断をうけ、その日のうちに手術日が決まった。病理組織検査はうけていない。(編者注:通常、転院すると、再度、病理組織検査(細胞診や生検)を行うが、この大学病院では、これを行わなかった)
インフォームド・コンセントにより、
病理組織検査をしないで温存療法に決定
★温存療法(乳房の4分の1切除)か全切除か。インフォームド・コンセントで本人が温存を選んだ。
★手術では、わきの下のリンパ節も取った。手術から1カ月後の外来で、主治医から、「がんではなかった」と告げられた。リンパ節を取ったので後遺症が残る。
納得がいかずに、医師に尋ねた。
★主治医は「前の病院で細胞診でクラス「5」が出ていた。術中も、疑わしい病理検査結果が出たので最小の手術をした。よその病院ならばっさりでしたよ」と語った。


A 医師は「苦渋の選択をした」というが、「2つの疑問」が残る


疑問1 なぜ、術前に「生検」をしなかったか
★(朝日新聞の)取材には、(大学病院の主治医は)こう話す。
★「細胞診で「5」が出たら、生検はせずに手術します。(編者注:何故、より確定的な「生検」を行わなかったのか)でも、他の検査などでは疑問も残った。そこで手術中に術中迅速病理診断をした。
★がんと出ると思っていたが、結論は、『乳がんを強く疑うが、確定診断は保留せざる得ない』。つまり灰色です。
疑問2 なぜ、「灰色」で切除したのか
★でも、細胞診の結果を重視し、最小限の手術をしました。
★処置を誤れば命に備わる、苦渋の選択です(編者注:「灰色」なら、手術をせず、経過観察でもよい場合もあるはず)。そこは医師にまかせてもらわないと。最善を尽くし、説明もしたのに納得されていない。大変ショックです」
疑問3:なぜ、外来で、より詳細な「生検」をしてくれなかったのか
★永久標本による病理診断は、悪性と良性の境界病変で、やはり(経過観察が望ましい)灰色だったという。
★鈴木さんは「最初から、灰色と知っていたら、手術をうけたかどうかわからない」という。術中に病理診断をすると説明された記憶はない。もし知っていたら、外来での生検を望んだはずだ。


B 患者は、「医師に全てをゆだねる」ことを理解してほしい


馬場医師:「私なら、「灰色」は、多分経過観察をします」
★東京共済病院外科の馬場紀行医師は「術中迅速診断は、誤診もあるのでやらない」という。
★特に「灰色病変への対処に正解はない。絶対的答えがないのに、患者さんの意思が反映されないところで、診断し、医者が決断するのは合理的とはいえない。
★僕なら、外来で生検をして、患者さんと話し合い、多分経過観察します」。
近藤医師:「灰色」は、リンパ節は取らない」
★慶応大学放射線科の近藤誠医師も「がんでもリンパ節を取らない場合がある。灰色では取りすぎ」だという。
意見を聞かない医師に不信感がつのる
★鈴木さんが手術台に横たわっている間に、医師たちは協議し、決断していた。
★鈴木さんは「先生の考えがあっても、事前に患者の意見を聞いてほしかった」と思う。手術の後遺症で手があがりにくく、体調が雇いと訴えても、医師が十分耳を傾けてくれないことも、不信感をつのらせた。
手術中は、医師に全てをゆだねる
★乳がんの手術を見た。上半身裸で寝かせられ、両腕を広げて動かないように固定される。本人は眠ったままだ。どんなに、医師と話し合って治療法を選んだとしても、手術台の上ではなすすべもない。
★自分の体も、人生も手術の場面では、他人にゆだねなくてはならない。
医師は、体が患者のもので、手術の方法は患者が決めることを理解してほしい!
★乳がん経験者の会ソレイユ会長の中村道子さんは、鈴木さんのように、医師がよかれと思っても、患者が納得できずに苦しむ相談を多く受けてきた。
「がんの診断は覆るのもままある。医師は、体は患者のもので、患者が決めることだというこを、もっと考えてほしい。患者は、人院してパジャマを着てしまう前に、診断の確かさについても、よく確認しておかないだめです。」