医療改革を前にA薬の「不正請求」の手口は様々
薬の書き換え・すり替え・量を減らすなど
朝日新聞(97-09-11)



※編者コメント: 医療機関が得る報酬は、診療報酬だけでなく、薬の書き換え・すり替え(安価な薬を患者に渡し、高価な薬を保険機関に請求するという)、あるいは、門前薬局からのリベートなど様々な形態があります。以下の記事から、医療機関は儲かり、国の保険財政が圧迫されることが判ります。

@ケース1 医療機関での「レセプトの書き換え」
Aケース2 調剤薬局における「薬のすり替え」
Bケース3 調剤薬局におけるその他の不正(減量、二重調合)
C調剤薬局から医師(医療機関)へリベートがわたる



@ケース1 医療機関での「レセプトの書き換え」


薬の不正請求の証拠がくっきりと残る
★例えは高級ブランドバッグ。ブランド品でない別物を正規の値段で売られたら、消費者は怒るはずだ。薬の世界では、そんな商法がまかり通ってしまうケースもあることが、複数の医療機関の関係者の証言からうかがえる。
★長野県東部のある診療所の医師が書いたカルテには、薬の不正請求の証拠がくっきりと残されていた。以下、いずれも血圧降下剤の商品名だ。
ローガン:薬価が低い薬(いわゆる安い薬)→医療機関はあまり儲からない
ケルロング:薬価が高い薬(いわゆる高い薬)  ※イタリック部は編者が記入

患者には安価な薬を渡し、請求するの高価な薬で
★「ケルロング」はボールペンで書かれ、その文字の上に鉛筆で、訂正したように、うすい傍線が引かれている。その上段に、もう一つの「ローガン」が、やはり鉛筆で書いてある。患者に渡されるのはこの「薬価が低いローガン」の方だ。
★ところが事務員は医療費の請求に使う診療報酬明細書(レセプト)には「薬価が高いケルロング」と記す。厚生省が定めた「ケルロング」の薬価は10_グラム1錠229.2円、「ローガン」は10_グラム1錠37.3円。この診療所は、薬のすりかえによって、医療保険から不正に差額を受け取ることができる。
医療機関は薬で二重の利益を
★こうして薬の購入価格と公定価格の差額、いわゆる薬価差益に加えて、不正請求による「ダブル利益」が診療所のふところに入る。
※編者コメント:「薬価差益」とは、国が定めた薬の価格(公定価格)と実際の製薬会社からの購入価格との差のことです。これと薬の書き換えによる収益で、ダブルに利益が得られるわけです。
薬の書換は、自己負担が少ないお年寄りが中心
★しかし患者はカルテを手にすることができないから、この「すりかえ商法」を見抜くことはできない。
★すりかえられるのは、一般患者より医療費の自己負担が少なくてすむ70歳以上のお年寄りが8割方を占める、という。
薬の書き換えは表に出ず、闇から闇へ
★商品名をえんぴつ書きしているのにも訳がある。不正摘発の頼りは県の立ち入り監査。しかし、この診療所では、監査が入る前に、カルテのえんぴつ書きの部分を職員総出で消しゴムで消してしまう、というのだ。
★こうして不正は文字通り、闇(やみ)に消されていく。




Aケース2 調剤薬局における「薬のすり替え」


医薬分業で、不正はなくなるのだろうか
★医療機関が薬を出さず処方せんを患者に渡して、薬局で薬をもらう医薬分業にすれは、こうした不正はなくなるのだろうか。
★首都圏のある医療機関は処方せん発行率100%の分業。近くに調剤薬局があり、ほとんどの患者がこの薬局に処方せんをもって行く。典型的な「門前薬局」だ。
薬のすり替えの手口の様々
すり替え例1医療機関が出した処方せんには、1c69.8円の抗生物質を出すよう記してある。ところが薬局では1c22円の安い薬が患者に渡される。保険請求するのは69.8円の薬の方で、その差額の37.8円が薬局が不正に得る利益となる。
すり替え例2同様の手口で1錠35.8円の筋肉弛緩剤は1錠14.3円の安い薬にすり替え。
すり替え例310_g74円の解熱鎮痛消炎削は同36円のものにすりかえられる。この解熱鎮痛消炎剤はビン入りで、薬の商品名を書いたラベルがはってあるが、薬局では、不正を隠すためラベルをはがして患者に渡している、という。



Bケース3 調剤薬局におけるその他の不正(減量、二重調合)


★この薬局での不正はこれだけではない。
処方せんより、薬の量を少なく調合する
★薬を節約するため処方せんに記された薬の量を少なく調合する。
再度調合する二重調合
★あらかじめ調合し包装してあるのに、処方を受けてから調合したことにする。調合の「手間賃」として医療保険から支払われる診療報酬の加算を受け取るためだという。


C調剤薬局から医師(医療機関)へリベートがわたる


医療機関と門前薬局との蜜月の関係
★大きな病院の前にはたくさんの薬局が軒を連ねる。いわゆる「門前薬局」だ=本文の口絵解説より。
★この医療機関の入り口には薬局への案内地図まで掲げられている。医療機関による特定の薬局への患者の誘導は健康保険法に基つく療養担当規則で禁じられており、規則違反だ。
★関係者は、この医療機関と薬局とのこうした関係を次のように明かした。
「医師と薬局経営者は持ちつ持たれつの関係にある。薬局が不正請求で得た金は、リベートとして医療機関側に流れているのです」