医療改革を前にC「ゾロ新」が、何故、高い薬価なるのか
実績のない「ゾロ新」が、広く開発される日本の実状
朝日新聞(97-09-14)



※編者コメント: 「ゾロ新」とは、既存の薬と少し化学構造を変えただけの新薬で、臨床実績も少なく、副作用も充分には解明されているとはいえません。しかし、日本では、厚生省と製薬会社との連携で、この「ゾロ新」が高薬価になり、国民の医療費の高騰につながります。「新薬ほど高薬価」、「歴史がある薬ほど低薬価」ということは、歴史がある副作用の少ない薬は、葬り去られることになります(資料8参照)。

@「新薬は儲かる」という、薬事行政が問題
A「ゾロ新」の薬価算定に、厚生省と製薬業界の癒着が関係する
B厚生省と製薬業界の癒着が薬価をつり上げる



@「新薬は儲かる」という、薬事行政が問題


日本の新薬の割合は、ドイツの5倍
★発売後10年までの新しい薬が薬剤全体に占める割合を示すデータがある。
日 本:5割
ドイツ:1割

★日本の新薬偏重の原因はどこにあるのか。
売る製薬会社も、買う病医院も儲かる
★都内のある民間病院には、製薬会社の医薬情報担当者(MR)が毎日6、7人つめかける。夕方、廊下に立って医師の手が空くのを待ち、薬を売り込む。
★この病院は2年前、長年使ってきた抗生物質の販売元の会社が新製品を出したのを機に、新薬の方も買うようになった。従来の薬の薬価は約1300円、新薬の方はその1.5倍の約2000円。
★院長は「効能は大して違わないが、MRの売り込みがうまくて、つい新薬を買ってしまう」と話す。高い薬を売って利益を上げたい製薬会社。効き目が同じなら、薬価差益の大きい新薬を求める医療機関。双方の思惑が「新薬シフト」と呼ばれる現象を招いている。
化学構造を少し変えた新薬が高薬価に
新薬と言っても、画期的な効き目があるものはまれだ。既存の薬と少し化学構造を変えただけの新薬、いわゆる「ゾロ
新」が多い。
厚生省は、こうした新規性のない新薬にも高い価格をつけてきた。その結果、日本の薬剤費は膨らんだ。





A「ゾロ新」の薬価算定に、厚生省と製薬業界の癒着が関係する


ゾロ新の薬価算定に、疑問の声が出たが
★政府の行政改革委員会規制援和小委員会は咋年、ゾロ新の問題をテ−マのひとつに選んだ。
★「薬価は公共料金と同じ。企業努力のないものは、先行する薬の半分程度の値段でいい」。小委の医療・福祉分野の責任者である連合の野口敞也(ひろや)総合政策局長はこう言って、薬価算定の在り方に注文をつけた。
★これに対し、厚生省は1994年4月に新薬の値決めルールを改めたことを持ちだし、「ゾロ新は25%は下げる。行政の努力も認めてくれ」と訴えたという。
厚生省による薬価下げは、ほんの少しだけ
★今年3月、野口氏と同じ小委の有料老人ホーム「グリーン東京」の滝上宗次郎社長が引き下げ状況を厚生省に尋ねた。
★厚生省の説明は、96年6月から今年2月までに出た新薬のうち、いままである似たような薬と効き目を比べ、その価格を参考に薬価が決められたのは17だった。
★そのうち、新規性のないゾロ新と認定されて、比較相手の既存薬より値段が下がったのは3つだけで、25%まで下がったのは1つしかなかった。そのほかの薬は、有用性があるとして、何らかの加算がついて類似薬より高くなったり、同じ値段がつけられたりした。


B厚生省と製薬業界の癒着が薬価をつり上げる


厚生省は、「ゾロ新」の認定基準を明らかにしない
★ゾロ新と認定したり、しなかったりする具体的な根拠は何か。複数あってそれぞれ値段のう既存の類似薬の中で、どれを新薬の値決めの参考にしたのか。厚生省はそのいずれも明らかにしなかった。
★滝上氏は「薬価交渉は、メーカーの交渉力によって厚生省の対応に差が出る。その中身をガラス張りにしなけれは、天下りと薬価昇定を通じて、もちつもたれつの関係にある厚生省と製薬業界の癒着を断ち切れない」と話す。
★八月になり、ようやく厚生省は新薬の価格算定に用いた類似薬名を初めて公表した。類似薬の公表自体は、薬価の透明化に向けた大きな変化だが、その類似薬を選んだ理由は明らかにされなかった。
★保険局医療課の赤川治郎課長補佐は、「最も似ているからとしか言いようがない」と言う。
新薬の薬価を、薬価の高い類似薬に合わせる厚生省
★厚生省が類似薬を公表した新薬のひとつに、じんましんなどに使う抗ヒスタミン剤がある。その価格を決めるうえで参考にされた類似薬は、ほかの抗ヒスタミン剤ではなく、主に気管支ぜんそくなどに使われる薬のグループに分類されるアレルギー性疾患薬だった。
★このアレルギー性疾患薬は、年間の売上高が200億円を超す国内ではトップクラスの大型商品で、この薬の仲間は、全般的に抗ヒスタミン剤より薬価が高い。
★厚生省がアレルギー性疾患薬を類似薬に選んだことについて、この抗ヒスタミン剤を出している製薬会社は「ほかの抗ヒスタミン剤に比べ、気管支ぜん息にも使えるという適応範囲の広さが評価されたのではないか」と話している。   
国際的に通用しない薬に、高い薬価をつける日本
★しかし、このアレルギー性疾患薬は、かつて日本の薬の審査の甘さを批判した米経済誌「フオーチュン」に「米国では承認されない薬」の代表例として名指しされた薬のひとつだ。
★国際的に通用しない薬に、高い薬価がつけられ、製薬会社に大きな利益をもたらす。その価格を参考にした新薬にも、また高い薬価がつく。こうして国民の医療費が消費されていく。