医療改革を前にE「後発薬」のマイナスイメージが、普及を阻害
安価な「後発薬」は、本当に大丈夫なのだろうか
朝日新聞(97-09-17)
※編者コメント:国は膨張する医療費を抑えるため、医療費の約3分の1を占める薬剤費の削減を検討しています。この薬剤費の削減を、@「患者の薬剤費負担率を上げる」、A「安価な「後発薬」を採用する」ことなどで実施しょうとしています。いずれの方策も、 我々にとってあまりありがたくないのですが、ここでは、Aの「安価な「後発薬」を採用する」ことについての課題が採りあげられています。
| @ | 貰う薬の種類が少なく低薬価なら、患者の費用負担は減少 |
| A | 低薬価の「後発薬」には、普及を妨げる悪印象がある |
| B | 低薬価の「後発薬」の普及上の問題点 |
@貰う薬の種類が少なく低薬価なら、患者の費用負担は減少
薬の種類が増えると、支払額が増える
★「安い薬もありますが、どういたしますか」。埼玉県北本市で診療を開いている青山邦夫さんは今月1日から、愚者に尋ねるようになった。
★医療費の本人負担に加え、病院や薬局種類が多くなるにつれ、患者の支払額が増えるという新たな制度が導入されたからだ。
1日薬剤総額が205円を超えれば、患者は費用を負担しなければならない
★1日当たり、薬の種類が、
| 薬の種類 | 薬剤費 |
| 1 | 0円 |
| 2〜3 | 30円 |
| 4〜5 | 60円 |
| 6以上 | 100円 |
★ただし、1日の服用回数が同じ薬については、1日分の薬剤費の総額が205円以下だと何品目でも1種類とみなされる。
※編者コメント:薬価が高くても、1種類なら、薬剤費(支払額)は0円。
そして、低薬価薬を選択する人が増えた
★だから、成分や効能が同じで薬価が低い薬を出したほうが患者の負担は少なくてすむ。
★青山さんは、3種類の胃潰瘍薬を処方している。1日服用分の薬価で高い順に並べると、183円、159円、60円。高い薬(例えば、183円の薬)の場合、鎮痛薬を一緒に出せば、205円を超える。すると、例えば、胃潰瘍薬と鎮痛薬の2種類なら、患者は1日分につき30円を窓口で支払うことになる。
★10日までに、胃かいようの患者5人が安い薬に切り替えた。保険の本人負担が1割から2割に引き上げられた40〜50歳代のサラリーマンが多かった。
※編者コメント:低薬価の胃潰瘍薬(例えば、60円の薬)と鎮痛薬の2種類で、1日服用分の薬価が205円以下なら、1種類となり、負担は0円です。この場合、「60円の薬」は、次項の「後発薬」などの場合があります。
A低薬価の「後発薬」には、普及を妨げる悪印象がある
低薬価の「後発薬」の普及は、まだまだ
★青山さんが処方している安い薬は「後発薬」と呼ばれる。ブランド薬の特許が切れた後、同じ成分で別の製薬会社が売り出す薬だ。先発薬メーカーのように開発費用がかからないから、薬価は低い。
★米国やドイツでは、薬剤費を節約するために後発薬の使用が盛んで、薬全体の3割以上を占めるといわれる。ところが、日本での後発薬の市場規模は約7%しかない。中小の後発薬メーカーが作る薬に対し、漠然とした不安感を持つ医師が多いからだ。
中小の後発薬メーカー品に対する不安@
★その理由のひとつは、品質に対するマイナスイメージだ。口から飲む薬は一般的に胃で溶け、小腸で吸収される。早く効き目を出すか、長時間持続させるか。目的に応じて溶け方も異なる。
★後発薬が先発薬と同等という場合、溶け方も同じであることが求められる。しかし、厚生省が行う薬事監視の溶出試験などで、先発薬との同等性に疑問を抱かせるような結果が出る後発薬がまれにある。「同じ効き目を期待できないかもしれない。こうした医師の不安が、特に大学や国立病院での後発品の普及を阻んでいる。
中小の後発薬メーカー品に対する不安A
★副作用情報の提供で後発薬メーカーに物足りなさを感じている医療機関もある。
★山形大学医学部付属病院は、数品目の後発薬を採用している。ところが、副作用が発生したとき、過去の同じような症例に関する文献をメーカーに要求しても、なかなか返事が来ないことがある。仲川義人薬剤部長は「最終的に、先発薬メーカーに頼まざるをえないこともある」と言う。
B低薬価の「後発薬」の普及上の問題点
後発薬メーカーには臨床試験は重い負担
★厚生省は最近、後発薬の品質を高める対策を打ち出した。今年2月、医療現場でよく使われる12種類の薬を再評価品目に指定、各製薬会社(後発薬メーカー)に品質に関するデータの提出を求めた。
★指定された薬のうち10品目をつくっている名古屋市の後発薬メーカーは、溶出試験の結果を提出したところ、複数の薬についてデータが不十分と判断された。
★同社は、改めて薬の血中濃度を測定する臨床試験を行う予定だ。担当者は「臨床試験は、1品目につき千数百万円かかる。厚生省に追加データを求められた会社の中には、『製造をやめる』と言っているところもある」と話す。
将来的は、後発薬も先発薬も、保険機関が医療機関に支払う金額は同一になる
★後発薬に対する規制強化は、医療制度改革と無縁ではない。
★与党3党はこのほど、一つひとつの医薬品に薬価がつけられている現行の薬価基準制度を廃止し、2000年度に「参照価格制度」を導入することで合意した。
★「参照価格制度」とは、同じ成分・効能の薬を一つのグループにして、その中であれば、値段が違っても医療保険から支払う金額を一律にするものだ。
結果的に、先発薬は患者の負担が増えることになる
★高い薬の超過分は患者の負担になるため、安価な薬(後発薬)を求める患者が増えることが予想される。
※編者コメント:例えば、気管支喘息の薬のグループの中に、先発薬が100円、後発薬が30円であったとします。そこで保険機関は医療機関に、気管支喘息の薬ということで、一律に70円支払うとします。この場合、医療機関が先発薬(100円)を患者に服用させれば、100-70=30円の赤字を生じます。これが患者の負担分増になります。
価格が同一なら、後発薬もデータが必要
★しかし、参照価格制度を導入するなら、米国のように後発薬の品質データを公開すべきだ、という声が医師や薬剤師の間にある。
★米食品医薬品局は1980年から、「オレンジブック」と呼ばれるガイドブックを発行している。後発薬が先発薬と同等であるかどうかを判定し、ランクつけをした本だ。だれでも入手することができ、後発品の普及に役立ったとされる。
★ある後発薬メーカーの社長は「多くの医師にすぐに後発薬を認知してもらうのは無理だ。米国でも認められるまでに15年はかかった」と語る。新しい薬価制度を導入するための条件整備には、まだ時間がかかりそうだ。